ねぇ本当は。
私の方こそ、あなたのものなのに。

 

おまえがいなければ、私は今生きてはいなかった。
…だから、本当は。この命こそ、おまえの、
 

知っているだろうか。
おまえがいることで、どれだけ私が救われているか。
兄を失ったときも。
責務の重圧に押しつぶされそうになったときも。
夢の果て無さに見失いそうになったときも。
いつも、おまえがいたから前を向いて立っていられたのだと。
 

だからきっと、おまえを失ったら、私は、

…それは禁忌の言葉だった。
 

逃げられぬ。誰よりも、自分からは逃げられぬ。
呉王だ。私は。君主だ。天下を望む、孫家の虎だ。

たとえおまえを喪っても、私は後を追いはしない。
それを何より望んでいようとも。

せめて、共に死にたいと。
自ら命を絶つことが叶わぬなら、
抗えぬ運命に、二人同時に殺されたいと、

「孫権様は…俺が、死なせません…命を懸けて、お護りします…」

あぁ。わかっているのだ。それは、なによりこの男が許さない。
おまえがいる限り、私が討たれることなどありはしない。

何よりも嬉しくて、だけど切ないその誓いが。

 

この命。あなたに助けられたから、あなたのもの。
この心。あなたに救われたから、あなたのもの。
この体、あなたに抱かれて、あなたのもの。

だけど私は、

 

おまえのように、私も誓いたいのに。

全てをくれた、この男に。私は何がしてやれるのだろう。

 

 

あぁ いつも、言いたかった言葉がある。
死ぬな。私を残して逝くな。
だって私は―――――――

 
 

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