この男の忠義は、疑うべくもない。
	愛もまた、痛いくらいにわかるのだ。
一つ一つ、傷をなぞる。
	私のためについたその傷は、それぞれがおまえの命を脅かした。
おまえはいつか私への愛のために死ぬだろう。
愛されるということが、こんな風に絶望につながるなんて思ってもみなかった。
	人との差異に怯え、ただ愛されたいと願った子供のころ。
	応えてくれるはずもないと、しかし諦めきれずにおまえに恋焦がれていたついこの間。
愛されている自覚が、こうも私を苦しめる。
	けれどそれを手放すなど、考えられもしないのだ。
わかっている。どうしようもないほど。
たとえおまえを突き放しても、
	おまえはきっと私の知らないところで一人、私のためだけに死ぬのだろう。
わかるから。
逃げたいわけじゃない。
	そんなわけはない。
 
重荷になど思うはずもない。
…本当は。
	覚悟など、とうに出来ている。
	人の命を背負うのはむしろ君主としての勤めでさえあり。
	自ら望んで手に入れた、この男の全てを。
	永遠に私だけのものにする、その、覚悟。
	
おまえの愛はいつだって私にとっての喜びで、それを苦痛に思うなどありえない。
ただ、うしなうことが怖いだけ。
	身を切られるように痛いだけ。
単純で切なる、ただそれだけの、
こと、なのだけれど。