まるで、互いのためだけに処方された、

 『Nepenthes』

 

 

[side:sun-quan]

私を包む腕に、そっと心の中でだけ言ってみる。

私はとても貪欲だから、
おまえくらいでないと満足できないよ。

わがままに欲しがる私に、
その大きな体と広い心の、しかもおまえは全てを捧げてくれるものだから。

私には、おまえだけだ。

ほら、生き方の不器用なおまえのことだから、
きっと忠義に生きるか、あるいは情愛に生きるか、どちらかのみにその全てをかけて生きるしかできなかったろう。
それは確かに素晴らしいことだったかもしれないけれど。
こんなにも忠実な、そしてこんなにも情の深い、そのどちらも人並み以上に熱いのだ。
そう思えば、私がおまえの主で本当によかった。
その片方しか生まれなかったとしたら、なんてもったいないことだったのだろうな?
しかもただの情人でも、ただの上官でも、こうやって両方を手に入れることは出来なかったのだから。

だからどうかその想いを私にすべてぶつけてくれ。

たまに見れる、おまえが達する瞬間の、意外に可愛い顔も好きだけれど、
何よりも、私がいく時、とても嬉しそうに柔らかく微笑むその顔が大好きで。
視界が霞むなかで、目の端にそれを焼き付けて、やがて意識が遠ざかる。

そして訪れる真っ白な眠り。
すべての憂いからのひとときの解放。

この時間があるからこそ、

目覚めた時にはまた君主の一日を。
己の身命を孫呉のためのものとして在れるのだ。

 

 

 

[side:zhou-tai]

俺に縋る身体に、口には出さずに囁きかける。

俺はひどく凶暴で、
あなたほどのひとでなければ壊してしまいそうだった。

己でも持て余すこの激情を、
けれどあなたはそのしなやかな体と優しい心で全て受け止めてくださるのだ。

俺には…あなたしかいない。

いつも、気を張り詰めておられるあなたは、
君主であるがゆえに振り切らねばならないことの多さに心を痛めていらっしゃる。
しかしその強さも、あるいは弱さもまた、欠かすことの出来ぬ、王者の器だ。
あなただけが持つ。
お心のままに、生きてくださればよい。悔やまないでいただきたい。
俺はあなたに仕えることができて本当によかった。
あなたの夢のため戦える。こうして抱きしめるだけでなく。
不遜は承知の上だが、俺はあなたの心も、志も、その両方を守りたいのだ。

だからどうかあなたの為に生きることをお許しください。

己の感じる快感も、他で得ようがないほど激しいものだが、
あなたが、俺の腕の中でうっとりと昇りつめるのが、何よりも、嬉しく。
微笑みのまま崩れ落ちる体を抱きしめる。

腹の上、精をこぼせば、幸せの感覚。
かつて知りえなかった、心の安寧。

あなたの温もりが許してくださるから、

この手がどんなに血にまみれようと、自分を見失わずにいられる。
己の命と武とを迷わず孫呉への忠義に捧げることができるのだ。

 

 

 

 

夜毎、思い知る。君が、僕の唯一にして最愛。

 

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