荒く息つく孫権様を横たえ、俺はその上に屈み込んで、焦れる様に頭を揺らす花芯に口付けた。
「あぁぅっ…っ」
舌全体で包むように舐めあげると、初めて知る感触に貴方がおののく。
先端をぐるりと嘗め回し、口内に含んでごく軽く吸い込んでみる。
先ほどすでに極まりかけていたそこは、ぴくぴくと揺れ動いて今にも弾けてしまいそうで、これ以上の引き延ばしは、さすがに幼い体に酷だろうとは思ったが。
…まだだ。
この程度では、まだ足りぬ。
王として生きることが決められている貴方、どうせいつか飽きるほど女を抱くことになるのだろう。
だから俺は、それとは違った、そしてそれ以上の快楽を差し上げたいのだ。
あと、もう、少しだけ、お待ちください。
ここまではまだ、将来、女どもから与えられるだろう快楽と同じだが。
そろりと後ろへ指を滑らす。袋の裏側をなぞり、ひそやかな小径の中央、蟻の門渡りを通って、小さな膨らみの群れが円を描いて守る洞穴に触れた。
「っえ…っ?!」
俺がいなければ、おそらく一生人に触れられることなどなかったであろう秘められた場所。
足の付け根を伝って流れてきた露を塗りこむようになでてゆく。
前下肢への、柔布をはさんだように刺激を抑えた咥内での愛撫と同調させて、入り口の薄い皮膚をゆるゆるとくすぐる。
ひだに沿わせるだけの浅さで爪の先を押し当て、軽く引っかいてみる。
「くぅん……ゃ、あ、な…に…」
未知の感触を、どう捉えたらいいのかと戸惑う孫権様の動揺が、震える声に溶けて、いっそう甘く響いた。
誘うように絶え間なくひくつく貴方の内部を、早く暴いてやりたくはあるのだけれど。
少しの痛みも感じさせぬうちに、教えて差し上げたいのだ。
この感覚は、貴方にとって快感なのだと。
抑制していた舌の動きの戒めを解き、存分に絡めて吸い上げる。
唇でびっちりと圧迫を加えながら往復させるのと同時に、指先だけを後孔にもぐりこませる。
「っぁああ――――――っ!!」
絶頂に孫権様の意識が埋め尽くされて何もわからなくなる瞬間、そしてぎゅうと内部が締まる直前にその準備のため一瞬だけ弛緩した瞬間を逃さず、ずっ、と奥まで指を突き入れた。
吐精の快感と絡め合わせることで、内部への刺激による彼にとってまったく馴染みないであろう感覚を、違和感なく一気に快感へと転換させたいのだ。
腰を何度も痙攣させて孫権様が精を吐き出すのを手伝うように、俺の咥内で大きく揺れ動く芯を舌をたわめて扱きあげる。それと同時に、彼の体内にある指先に触れていたしこりを、ぐっと押しまわした。
「っっっ!!」
狭く蠢く鍵穴に、形に合わせるように指を折り曲げぐるりと回して、
官能の扉をひらいて差し上げる。
開け放たれたその奥に隠された秘密の感覚が、激流のようにあふれ出て、もうとめられはしない。
その躯で覚えてください。
これを、快楽というのですよ。
「…嘘…だろう……なんで、っ、こんな……おさまら、ぬ……っ」
指を引き抜いて身を起こし見下ろせば、全身を真っ赤に染め上げ、息も絶え絶えに訴えてくる貴方。
達し終わるその瞬間に、最奥の火種に着火したため萎える暇なく昂ったでしょう。
解放と再発が混じりあい、どう感じていいかわからぬまま、腰全体が甘い震えに包まれて、
今はもう、後ろがうずいてきているはずだ。
知ってください。
そこから生まれくる、この上なき快感を。
孫権様の背に手をまわして抱き上げ、碧く滲む瞳からはらはらと零される涙を吸い込むように目尻に口付ける。
すると、きっ、と睨み付けられた。
怒りをはらんでいるのは昼間と同じだったが、そこには不安ではなく、甘い熱が揺らめいていた。
「幼、平…!…お前……っ…だって、鎮めろ、と、言っただろう……!」
孫権様は俺の胸元に爪を立てようとされたが、力の入らなくなっている手は細かく震えながらずるりと下にすべっていった。
手が降りた先で俺の腰帯に触れ、きゅ、と掴まれる。
そのままするりと引かれた。
鎧は外していたもののずっと着たままだった衣の前がはだけて晒しだされた俺の胸の肌に、直接孫権様の頬が寄せられる。
「…お前に…鎮めて欲しい、と……」
温かな、とも、締め付けられるような、とも、そのどちらともいえる想いが込み上げてきてたまらなくなる。
…無論、このまま終わりにするつもりなどもとよりありませぬ。
唇を重ね、溶けるように絡め合わせてから、体を離して、牀台の外で着物を脱いだ。
衣を全て床に落とし、振り向けば、どこか夢のうちにあるように蕩けた目でこちらを見る貴方の姿。
「幼平……」
頼りなげにこちらに差し出される腕と、細く甘い声に導かれるまま、そのもとに戻ろうとした。
だがそのとき、この部屋を包む甘美な空気とは異質な、無粋な音が扉の外から聞こえてきた。