「ふざけるな!」
「…へえ、人質がどうなってもいいんだな。」
「!!」
『お父さんの命のほうが、大事だもんね?』
昼間の妲己の声が甦る。
…そうだ、抵抗は、何一つ。
四肢から力が抜けていくのを感じる。
あの女狐は、どこまで私を辱めれば気が済むのだろう。
「そう、大人しくしてりゃ悪いようにはしねえよ。」
抵抗をやめ、身を固くするだけになった孫権の下衣を下穿ごと男が引き摺り下ろす。さらけ出された下半身に無造作に酒がかけられた。
「っ」
冷たい感触に孫権がびくりと体を震わせる。そのさまを見て男たちがぎゃははと耳障りな笑い声を上げた。
そして、あろうことかそのまま慣らしもせず一人の欲が押し入ってきた。
「ひっ――」
激痛。
「ぐあぁああっ!!」
双丘を割り裂くように両腰を掴まれ、ぎっ、ぎっと不自然な音を立てて内臓が押し広げられていく。
もっと飲めよと繋がった部分めがけて更に注がれた酒は、とろりと濁って多少ぬめりがあるとはいえ、摩擦を和らげるのには不十分すぎる。やがて男の動きが速まり、そして次の男が入ってきても痛みが治まる気配はなく、体を裂かれるような感覚に生理的な涙が出てくるのを抑えられなかった。
(たす…け……)
傷ついた粘膜から染み込む酒のせいか焼き切れるような痛みのせいかぐらぐらする頭の中、一瞬、ある顔が浮かんできそうになって、あわてて打ち消す。
(駄目…だ)
それは、助けてほしい時、常に思い浮かべそして応えてくれた顔であったが、今だけは駄目だ。
こんな時に、その姿を思い出したくはない。
こんな時に、たとえ心の中ででも呼んでいい名ではない。
(……く…)
ぐっと歯を食いしばり、密かに体の痛みからではない涙をこぼした孫権に、
「しばらくは一緒の軍だ。これからよろしく頼むぜ。」
絶望的な内容を告げる声が降り注ぎ、無情の夜が始まった。