そこにはいくつかの蠢く影。
暗い部屋の中には、小さな牀台の他はがらくたが散らばっているだけで、たいしたものは置かれていない。床には薄汚れた敷布が一枚。その上に、数人の男が妙に密集して立っている。
「ん?」
一斉にこちらを見る顔は、ひとつふたつ…全部で5つ、いや、6つ。中央に4人と、少し離れた床に座っているのが1人、牀台に腰掛けているのが1人。
むっと鼻につくほこりと汗と、体液のにおい。
「……貴様ら……何を……」
周泰の目の前に、突きつけられたそのおぞましい光景。
普段からごく簡素なものしか身に纏っていない男らは、今はさらに下衣の前をくつろげ、中には全裸の者もいた。
そして、その中心で、やや前屈みで膝立ちになっている一人の姿。
背後の男の下腹が、折り曲げられた腰の下に回りこむように密着させられている。
肩幅に開かれた両足の間、内腿が薄く濡れて光っている。
細かにわななく唇とその周囲の頬に白濁の雫がねばり付いている。
蝋燭の火に照らされて赤く透ける髪は解かれてぱらぱらと体の前に散り、ほんのりと汗ばむ肌は白さのうちに痛々しいほどの血色をたたえている。
灰色の肌と青白い頭髪の、人間ではありえない容姿をした男どもに囲まれた中で、その鮮やかな色彩はひときわ美しく際立っていた。
先ほど自分が吐いた言葉とは裏腹に、問うまでもなく、今ここで何が行われているのかは明白であった。
「……しゅう…た…い…」
遠呂智軍の兵士に取り囲まれ、犯されているのは、紛れもなく、己の主、孫権だった。
始まりは、もうずいぶん前のことだ。
孫策離反の知らせを、孫権は守りを命じられていた呉郡で聞いた。
ちょうど反乱軍との小競り合いを終えたところで、その報告を聞くと孫権は周泰に後の処理を任せ、すぐさま単身夏口に赴き孫策を追った。
けれど一人逃げ出した孫策に対し、結局止めることはおろかその真意を問うことも出来ずに帰還した孫権に妲己は、意外にもひどく楽しそうに告げた。
「あーあ孫権さんたら取り残されちゃってかわいそー。本当なら全員処刑しちゃってもいいんだけど、せっかくだから自分で後始末つけさせてあげよっかなぁ。」
「っ!…ありがとうございます。必ず、必ずや、兄を捕らえてまいります。」
「うふふっ覚悟を決めた男の人ってかっこいい!」
大げさな表情で、からかうように称賛めいたものを投げかけた後、
「お父さんの命のほうが、大事だもんね?」
明らかな、脅迫の言葉だった。
「こっちの部隊も貸してあげるから、早いとこ孫策さんを捕まえちゃってね。」
そう言って送り込まれた遠呂智軍の部隊は、形だけは呉軍の指揮下に置かれるらしいが、実際には監視以外の何物でもない。
もはや、少しの抵抗も許されないのだ、と孫権は絶望とともに理解した。