「ひぅっ」
 急に中のものが引き抜かれ、ぐい、と体を倒され、向かい合うかたちに変えられる。
 両足を大きく広げたまま高く持ち上げられ、再び差し貫かれた。
 ぐっ、ぐっと抽挿を繰り返しながら周泰の体が前に倒れ、素肌の胸に抱きしめられる。
 動きやすくするための、ただの体位の一環にすぎぬとわかっていても、そのことをどうしようもなく嬉しく思ってしまった。
 荒々しく口を塞がれたのは好都合だった。熱に浮かされた唇は、あらぬことを口走ってしまうかもしれない。
「んぅうっ、ぅっ、っ、」
 募る恋情を抑えつけながらも、つい両腕が上がってきてしまう。…背を、抱くことは許されるだろうか。
 逡巡していると、その瞬間、ぐりっと、感じるところを擦られて、反射的にその背に爪を立てた。
 指先に、引き攣れた傷跡の感触を感じる。ずっと傍にいて、自分を守ってくれた男の体。
 怒りのままに孫権を犯していても、抱きしめる肩から腕の筋肉のうねりはどこまでも優しく。


 ああ、快楽に翻弄されたせいだと、言い訳ができるだろうか。

 頭の隅にそんなことを浮かばせ、孫権は周泰の逞しい背中に夢中でしがみついた。


 今だけ、今だけだ、
 この想いを口に出したりはしない、おまえからの愛を期待したりもしない。
 だから、こうして体だけ、抱き締め合うことを許してくれ。


 どくどくと身の内に注がれる周泰の熱を感じながら、強く肩に縋り、孫権はもう何度目かわからない絶頂を迎えた。


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