まるで、互いのためだけに処方された、
『Nepenthes』
[side:sun-quan]
私を包む腕に、そっと心の中でだけ言ってみる。
私はとても貪欲だから、
おまえ位でないと満足できないよ。
わがままに欲しがる私に、
その大きな体と広い心の、しかもおまえは全てを捧げてくれるものだから。
私には、おまえだけだ。
ほら、生き方の不器用なおまえのことだから、
きっと忠義に生きるか、あるいは情愛に生きるか、どちらかのみにその全てをかけて生きるしかできなかったろう。
それは確かに素晴らしいことだったかもしれないけれど。
こんなにも忠実な、そしてこんなにも情の深い、そのどちらも人並み以上に熱いのだ。
そう思えば、私がおまえの主で本当によかった。
その片方しか生まれなかったとしたら、なんてもったいないことだったのだろうな?
しかもただの情人でも、ただの上官でも、こうやって両方を手に入れることは出来なかったのだから。
だからどうかその想いを私にすべてぶつけてくれ。
たまに見れる、おまえが達する瞬間の、意外に可愛い顔も好きだけれど、
何よりも、私がいく時、とても嬉しそうに柔らかく微笑むその顔が大好きで。
視界が霞むなかで、目の端にそれを焼き付けて、やがて意識が遠ざかる。
そして訪れる真っ白な眠り。
すべての憂いからのひとときの解放。
この時間があるからこそ、
目覚めた時にはまた君主の一日を。
己の身命を孫呉のためのものとして在れるのだ。