「殿……周将軍が……!!」
戦に一段落がつき、陣をたたんで出城に引き上げていたときだった。
先鋒部隊に先駆けて戻ってきた伝令が告げた一言で、周囲が音を無くした。
「…殿……あの、」
大丈夫ですか、と側近が声をかけようとした次の瞬間、
凛とした硬質の声が響き渡った。
「 … 誰も、悲しんではならぬ!!
この戦、何人もの将兵が散っていった…
彼らのためにも、その功績をたたえ、この勝利を喜ぶのだ!
宴の準備をせよ!
孫呉の酒は陽気なもの、
誰ひとり、悲しむことは許さん!! 」
自らの剣を高く翳して叫ぶ孫権に、一瞬うたれたような静寂ののち、怒涛のように歓声が沸き起こった。
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その夜、催された酒宴。
『誰よりも殿が悲しんでおられように…』
『あの強いご意志、これでまた兵の士気が上がりましたぞ。』
『さすが虎の血を引く君主の器、いや感服いたした。孫呉も安泰ですな。』
…しかし、宴の途中で孫権の姿が見えなくなったことを、気にとめるものはいなかった。