雨日狂想

 

あの水仙の花はあなただったのでしょうか。

月の光の中で凛と輝いていた、

あの水仙の花はあなただったでしょうか。

しなやかな手足と、

鮮やかな笑顔で、

あのとき私を許してくれたのは、

あなただったのでしょうか。

 

すべて忘れて去っていく非情な私です。

 

       

 

それは、思い出せないのでなく、

もう無いのですよ。

思い出は、あまりに痛いので、

殺してしまったのですよ。

 

そういえば、雨が降っていた。

濡れた君はあまりに小さくて、

夜には雨が上がり、

満月が出ていて、

照らされた君はあまりに綺麗で、

私は、――――――――――

 

ああ、もう思い出したくない。

 

死んだ筈の想いが、

殺した筈の心が、

永遠に閉じ込めておこうと思ったのに。

 

 

       

 

満月の夜のあなたは、清らかに気高い水仙でした。

新月の夜のあなたは、白く浮かび上がる水蓮でした。

雨の夜のあなたは、―――――――――

 

私の肺に流れ込む、水そのもの。

 

 

 

 

 


「睡蓮」を「水蓮」としたのはわざとです。私の当て字・・・でしょうねぇ。
でも英語だと「Water lily」だしいいかなと。