その周泰の目が僅かに見開かれたのを見たと思った次の瞬間、孫権の体は牀台の上に倒れていた。
「…………………は…」
  いつもよりさらに低く押し殺した声が了解の意を告げるのを耳の後ろで聞いた。
 そのまま周泰の唇は首筋をつたい、鎖骨を滑って胸に至った。
「ああっ」
 ぞくぞくと快感が体の奥からわきあがってきて、孫権はたまらず声を上げた。
 つい先ほどまで剣を握っていた、周泰のざらざらとした掌が、裾を割り裂いて太ももを直接に撫でる。
 反射的に逃げる孫権の腰を強引なほどにしっかりと押さえつけ、その部分を握りこんでずる、と擦りあげられた。
「しゅ、…っ」
 性急な愛撫だった。
 だがそれがたまらなく感じる。
 ばさりと衣を取り払われ、露わになったものを、今度は口に含まれる。
 周泰の口内は、興奮のためか随分と乾いていたが、それでもじわりと舌から染み出してくる唾液と、孫権自身から零れる先走りとですぐにぐちゅぐちゅと濡れた音を立てるようになった。
「っは、…ぅうっ…っ」
 するどい射精感がこみ上げてくるのを、腹に力を入れて耐える。
 違う、そうではない、そうじゃなくて、周泰の熱に焼かれたいのだ。周泰の得物で貫いて欲しいのだ。
 そう不満に思った孫権が文句をつけようとした瞬間、後孔に周泰の指が触れて、息を呑んだ。
 円を描くように数度撫でてからぐっと押される。足の付け根を伝って流れてきた露に助けられ、少しだけ指先が中に入り込んだが、周泰はそのまま押し込もうとはせず、体を一度離した。
「…何か…油のようなものは…」
 たずねられ、少し頭を巡らす。牀台の傍に置かれた棚の中に、髪を纏める時に使う香油があると告げると、「…失礼…」とことわってから周泰が引き出しを開け、小さな瓶に入ったそれを手に取った。
 再び口淫が始められ、それと同時に油が絡んだ指が後孔にずるりと差し入れられる。
 長く、節のたった周泰の指が何度も往復され、やがて本数が増えていくのにただ翻弄される。いいとか悪いとかではない。まだそんな余裕はなかった。ただ、自分の体が受け入れる準備をしていくのを、単純に嬉しいと思った。
 それでも少しずつ疼きが甘い色を帯びてきた頃、中を探っていたものがふっと引き抜かれたかと思うと、熱い塊が入り口に押し当てられた。
 これから何が起きるのか頭が理解するより早く、胸が期待に跳ねる。
 と、一気に奥まで貫かれた。
「っあああっ―――!」
 先ほどから知らず目をつぶっていたから、はっきりと周泰のそれを見てはいなかったが、孫権の体内に入り込んできたものは圧倒的に太く、長く、あまりに雄雄しかった。
「っあっ、はっ、うぁっ」
 ためらいなく抜き差しを始めた周泰の動きにあわせて声が零れる。
 生理的に涙が溢れ視界が滲んだが、全身を包むのはひたすらに悦びだった。
 繋がった部分の、普通だったら耐え切れないかもしれないほどの激痛も、今は興奮を誘う材料でしかない。
 入り口が内壁が擦り切れるように痛むたび、体の奥底が熱く滾る。
 この痛みは、たしかに生きている証だ。
 そしてこの男が生きてここにいる証だ。
 戦のただなかの、この場所での交わりに、甘ったるい情緒など不要だった。ただ互い獣に戻り、本能のままに交わり合うだけだ。それでいい。
 強く瞬いて涙を押し出し、少しだけ明瞭になった視界で前を見れば、ぎらぎらと黒光りする視線とぶつかる。
 …ああまさに、刃そのものだな。
 まだ戦場での殺気を色濃く残した周泰の目は、鋭く孫権の胸に突き刺さる。
 そうだ、もっとその目で私を貫いてくれ。
 つい先ほど互いが生きていることの実感を強く追い求めたけれど。
 …今、は。
 昼間の渇望が再びよみがえり駆け巡る。
 押し入られる部分から身体が引き裂かれそうな感覚に、自然と零れる喘ぎとも苦悶ともつかぬ声と共に、欲望がじゅうじゅうと孫権の喉を焼いた。
 周泰の、武人らしく鍛え上げられた大きな身体が孫権を組み敷き、腰を叩きつけてくるのに、気が遠くなるほどの恍惚に陥る。
 遠慮は要らない。どれだけ傷ついてもかまわない。
 もっと、もっと強く、私を引きちぎるように喰らい尽くせ。
 敵を屠るように、私に向けて獣の殺意をぶつけてみせろ。
 無論、死にたいわけではない。
 一瞬の気の迷いが命取りとなる戦場で、少しでもそんなことを望んではいけない。
 君主として、それはあってはならない。
 ただ……この男に殺されたい。
 あの目で射抜き、燃える闘志で斬り裂き、鋭い視線と滾る強靭な得物で突き殺して欲しい。
 敵刃から庇って私の身体にまわされるその逞しい腕で骨が折れるほどに抱き締めて絞め殺して欲しい。
 私のために命を投げ出すこの男に、守られながら殺されたい。
 生と死の入り混じり交錯する戦場の空気にあてられて高揚した心は、矛盾する想いを渾然と胸に沸き起こさせる。
 それが、ひかぬ激痛の一方で同時に強烈な快感を感じているその部分とこの行為に似ていた。
「ぅあっ、しゅう、た、ぃあっ、名を…っ、名を呼んでくれ…!」
 限界を感じ取った孫権が周泰の両腕にそれぞれ五本ずつ十本の爪を立て、ぎりぎりと掻き毟りながら言えば、
「……………孫権、様……」
 低く掠れた声が吐息と共に薄い唇から漏らされ、それを聞いた瞬間、孫権は絶頂を迎えた。
「――――――っあぁぁっ!!」
「…………っ」
 射精と同時に絞るように締め付けを増した孫権の後孔に、最奥まで自身を押し込んでいた周泰は、一瞬片目を顰めて腰を引こうとした。そこに、孫権の両足が絡みつく。
 許可を得たのだ、と理解したのか否か、瞬間的に周泰は孫権の中に精を放っていた。
 熱い迸りが身の内に注がれるのを感じて、孫権は体を震わせた。
 そうだ、私の中にすべて出してくれ。
 女とは違い、いくら孫権がそれを受け入れても新たな生になることはないけれど。
 お前の命を、私に。
 それは確かに周泰の生の一部なのだと、孫権は自分の腹の奥を満たした熱をたまらなく愛しく思った。


 

 死と同じだけの絶対的な強烈をもって与えられる生。
 どんな戦場であっても、この男がいる限り、私が死ぬことはないだろう。
 瞳に剣呑な光を宿したまま、それでも静かに身体を引いていく周泰に、孫権は満足げに心からの笑みを投げかけた。

 

 

 共に、生を分かち合い、生き抜く。


 

 いまは、それだけでいい。

 

 

 

 

 


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言うまでもないかもしれませんが4以前の泰権。周泰がやった「突き」はチャージ6です。
あれな…あまりにタメが長すぎて使い難いんだよな…でもかっこいいから無理して使うよ(修羅モードや難度修羅ではやらないけど)陰属性も付くしね。
子孫残す本能がどうこうって話は結構有名だと思うんですが(特に腐女子間なら)、どうでしょうね?
なんかとあるサイト様でそんな漫画読んで唐突にこの話が思い浮かびました。もちろん内容は全然違いますよ。因みににそこは大手関劉サイトさんです。
そして女王様、というか男前Mの権たんを目指したんだけどなんか違う気がする…
あと獣っぽい泰も目指した。あ、そうそう、私権泰駄目なんで、お好きな方いらっしゃったら、ああいう表現になってしまってすみません。

しかし次の日権たん馬乗れないよなこれじゃ…